家族団らんの中、自分たちもめったに食べられない商品が盗まれる。「母さん、パンがなくなった。餅も盗られた!」と、 大騒ぎ。しかし、セキは「よほどお腹を空かした人かもしれない」と、それを許すのである。子どもたちは、この母に育て られた。その中に、後に築地署で虐殺される作家、多喜二がいた。セキには殺された理由がわからない。 「貧しい人がいない世の中を作るのがなぜ悪い・・・?」 セキは日夜、多喜二の面影を追い求める。